新聞に掲載されました。
| 猫伝染性腹膜炎(FIP)FIV感染症(猫エイズ)FeLV感染症(猫白血病)
Q:FIPはどんな病気ですか?
A: 猫のコロナウィルスであるFIPウィルスが原因です。猫伝染性腹膜炎(FIP:エフ・アイ・ピーと読みます)という名前がついていますが、病名の通り腹膜炎を起こすものが一番多いながらも、他の病気が起こることもあります。腹膜炎が起こると腹に水が溜まり、腹部が膨らんでぷよぷよした感じになります(ウェットタイプ)。同時に元気、食欲はなくなり、熱のためにぐったりすることもしばしばあり、体全体としては痩せてきます。また、下痢が続くこともあります。また肝臓や腎臓が悪くなることも多いので、全進的に重い病気になりやすいものです。同じような病気が胸に起こると、胸膜炎となり、胸水が溜って肺が圧迫され、呼吸が苦しくなります。別の型では腹膜炎は起こらずに腎臓や肝臓に硬いしこりができ機能障害が進行するものもあります(ドライタイプ)。さらに同様の病気が脳に起こると、麻痺などの神経症状が出ます。また目に炎症が起こって、濁ってくる場合もあります。一般に、発病した場合はその後徐々に病気は進行する傾向にあり、死亡率は非常に高いとされています。特に貧血と衰弱が進み、神経症状が出ていると最悪で、治療の見込みはありません。
Q:こんな恐ろしい病気が猫にあるなんて......人間や犬や大丈夫?
A: FIPウィルスは猫科動物だけで病気を起こすもので、人間や犬に対する危険性はありません。同居猫がいる場合、発病猫からウィルスがうつっている可能性がありますが、同様に発病するかどうかは予測しにくいものです。
Q:治療はできるのですか?
A:発病した猫の治療は、本当に有効な方法がまだ見つかっていないので、症状を和らげる対症療法が主体となります。というのも、猫の体内のウィルス自体を殺す薬はないし、またどのようにして発病するのか不明な点が多いからです。したがって病気の進行を遅らせ、猫の不快感をある程度改善する効果は期待できますが、完治の為の治療ではないことを理解して下さい。獣医師は全身状態を評価した上で、治療が可能かどうか判断します。
Q:こんな病気が蔓延したら猫が全部死んでしまうのでは?
A:多くの猫がこのウィルスに感染するのですが、実はウィルスに感染しただけでは発病しないのです。感染しても、90%以上の猫はウィルスを自分の力で殺してしまい、いつの間にか感染は終わってしまうのです。それでなぜ一部の猫が発病するかというと、これはよくわかっていません。多分ストレスその他のファクターが一緒になって発病するのだと考えられています。
Q:FIPテストでは何がわかるのですか?
A:このテストでは猫がFIPに感染したことがあるかどうかがわかります。猫がFIPウィルスに感染するとウィルスに対する免疫、すなわち抗体を作ります。テストではこの抗体を調べているのです。
Q:それでは抗体があるということは、猫が免疫を持っていると理解してよいですか?
A:確かにそうです。ただし免疫をもっているということは、一般には病気にならないという風に理解されがちですが、この病気の場合は違います。実は、免疫が異常に高まることによって、FIPという病気は起こると考えられているのです。たとえばアレルギーというものがありますが、これも免疫が異常に強く働いて、体に不快な症状が出るものです。ここで免疫の強さの指標として、抗体の強さすなわち抗体価という数字で表しますが、FIPの場合抗体価はむしろ0の方が安心なのです。

Q:FIP抗体価0(または100以下)ならば安心なのですか?

A:とりあえず安心してよいでしょう。何か病気があるにしても、その病気が致死的なFIPである可能性はきわめて低いといえますし、健康ならば何ら心配はありません。その後感染源との接触がない限り発病の心配はないと思われます。ただし他の猫との接触があれば、今後FIPにウィルスに感染しない、あるいは抵抗性であるという保証はありません。現在このウィルスに対するワクチンはないので、最良の予防法は猫を感染源と接触させないことでしょう。これには室内飼いを守ることがベストです。
Q:健康な猫でFIP抗体価400という結果が出た場合、どう考えたらよいのでしょうか?
A:健康な猫で抗体価400の場合は、今ウィルスに感染しているか、あるいは過去に感染があってウィルスが消えて行く途中かの、どちらかです。今のウィルスが感染しているとしたら、将来FIPの発病が見られる可能性もありますが、その可能性はストレスを避けた飼い方をしていれば10%以下の低いものでしょう。事実、東京地区の猫は、猫同士の出会いによって感染する機会が多いのか、検査した猫の50%が400以上の抗体価を持っていました。しかしながら、この中で実際に発病したのは10%以下でした。
Q:抗体価400の猫でFIP発病するものが僅かながらいると聞くと、やはり心配です。本当に発病しないと言えるようなテストはないでしょうか?
A:少し時間がかかりますが、時間を追って、抗体価が下がるかどうか見ればよいのです。ウィルスが体内から消えて行けば、抗体価は下がります。ですから1ケ月または2ケ月待って、FIP抗体価をまた検査します。その時下がっていれば、ウィルスは消えてしまっていると解釈でき、したがって安心してよいと思います。逆に抗体価が激しく上がっていると、ウィルスが体内でどんどん増えている状態が考えられますので、あまり良くない兆候です。このような場合には詳しく診察する必要があります。
Q:抗体価が最大の12800と診断されました。今は元気ですが、もうすぐ発病するのではないかと心配ですが?
A:12800以上という高い抗体価も、実はそれほど珍しいものではありません。ただし抗体価だけでいうと、FIP発病のものも、このような高い価を示すものが多いのも事実です。ここで大切なことは、抗体価が陽性ということだけで、FIPという病名をつけてはいけないということです。したがって、FIPに特徴的な症状はないか、血液中の蛋白質に変化はないか、などの精密検査を受けた方がよいでしょう。それで異常がなければ、1〜2ケ月後の検査で抗体価が下がるのを待ちましょう。実際に多くのものは抗体価が下がります。抗体価が下がれば心配は少ないといえましょう。
Q:お腹に水がたまり、FIPらしいと言われました。それならばもうFIP検査をする必要がないのですか?
A:猫の腹水の原因はいろいろありますので、その鑑別にFIPテストは役立ちます。また腹水を抜いて検査することも可能です。すなわち、臨床症状、腹水、その他のテストに加えて、抗体価が検出されれば、FIPという診断が確定します。
Q:治らない病気の診断を確定して何のためになるのですか?
A:動物のことだからいい加減な診断で良いということはないと思います。まず確かな診断を行って、方針を立てるのが筋道ではないでしょうか。たとえばFIPだとわかれば、こことここに症状が出るから、このように苦しみを和らげる、というように正しい処置が可能です。また望みがないならばこれ以上の苦しみのないように安楽死を考えるということもあるでしょうが、逆に望みのある病気をFIPと誤診して、安楽死を考えるような過ちがあってはならないのです。
Q:腹水が溜り、熱があってぐったりし、いろいろな検査をした結果FIPと診断され、その後死亡しました。その時のFIPの抗体価は200と聞きましたが、抗体価が高くても病気にならないものがたくさんいる反面、このように激しい症状を出して死亡した猫が200というのはおかしい気がします。テストは本当に正確な値を出しているのでしょうか。
A:この猫が本当にFIPで死亡したと仮定してまずお答します。決して多くはありませんが、本当にFIPで死亡した猫が200とか400とか低い抗体値を示していることがあります。これはとくに死の直前に抗体価が下がるものが多いようです。これは死が迫るにしたがってもはや熱を生産できなくなって体温が下がるのと同じように、全身の栄養状態が悪化して、もはや蛋白の1種である抗体が作れなくなるというようなことが考えられます。ですから、臨床症状、検査所見がすべてFIPを示すものであって、抗体は0でなければ(100以上)、FIPという診断は確定します。それとは別に、全く別の理由で(たとえば細菌感染による腹膜炎で)猫が死亡したのだとしたら抗体はその病気とは無関係なので低くても良いはずです。ですからFIPの診断は抗体価だけで行うのではなく、症状、腹水の検査、その他の血液検査などを総合して行う必要があります。

Q:抗体価の高さと病気は必ずしも一致しないのですね?

A:その通りです。FIP発症のものの多くは6400とか12800とか高い抗体価を示しますが、中には200で死亡するものもいるのです。また腹水や胸水の溜らないドライタイプでは、やはり抗体価があまり高くならないものがあるようです。逆に健康で12800や6400のものもたくさんいます。ですから、FIP抗体価は、症状が見られる猫の診断の確定のめ、補助的に使うのが良いと思われます。
Q:それではFIP抗体のテストはすべての猫に対して行う必要はないのですか?
A:すべてに対して行う必要はないと思います。熱があるもの、下痢があるもの、腹水・胸水のあるもの、ぐったりとして元気食欲のないもの、このような症状が見られるものについて、診断を進めて行く上で必要なものです。
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